茨城県図書館協会のステップアップ研修会。
会場は筑波大学附属図書館。
今回はCode4Lib JAPANに委託し、WebOPAC+を実際に作るWorkshopを開催。
講師は野田市立図書館の川嶋氏。アシスタントがゆうき図書館の牧野くん。
自分は純粋に受講者としての参加だったが、半分くらいはカメラマンを兼務。
事前に主催者に「終わったら絶対に懇親会やってね」とオーダーしていたので
修了後に講師陣・主催者・筑波大学附属図書館関係者らと懇談。
座って話を聞いて帰るだけでなく、「あれってどういうこと?」「もっとこう
いう流れで説明した方がわかりやすいんじゃない?」などと講師を囲んで意見
を交わせるこういう場は、研修とセットで実施しないと実にモッタイナイ。
茨城県図書館協会研修委員アドバイザーの委嘱を受けたことだし、これはもう
マストですよと毎回言ってやろう!と、そんなことを改めて思った。
研修より懇親会が勉強になったくらいかも?と言ったら講師に失礼か(笑)
研修内容、公共図書館員相手にJavascriptの話はちょっとレベルが高いなぁと
いう感じもしたが、実際に自分が作ったものが動くというインパクトは大きい。
ワークショップ形式の研修は、やっぱり面白い。

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■ 「図書館の壁の穴」 /  田圃
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第44回 施設運営について思うこと。

6月28日のテレビ東京ワールドビジネスサテライト」では、「企業の知
恵で変わる図書館」という特集があり、図書館の指定管理者制度についての
放映があった。
http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/wbs/feature/post_22902/

これを見て、普段から図書館をよく利用する人と、まったく利用しない人と
図書館で働いている人との感想は、相当に違うんだろうな、という気がした。

この番組を見た人による、図書館員のサービス精神は歓迎だけれど、「いら
っしゃいませ」と言われるのは、違和感があるというような感想をネット上
で見かけた。
それには「そうだよねぇ」と図書館員の立場から賛同できたし、他にも図書
館をTUTAYA化にすることに対する感想なども聞けて興味深かった。

いまその時のサービスに特化して、その年度の成績を上げるのが図書館の本
務なのかというと、そういうものではないだろう。
むしろ過去に遡って資料を整理し、データ化して、こんなものもありますと
提示したり、いつでも出せるように備えるような仕事の方が、僕の中ではプ
ライオリティは遥かに上だ。
「いらっしゃいませ」と制服を着て立ち上がってお辞儀して迎えることより
も、求めている人に対し、探している資料や情報を、的確にとことん探しつ
くす熱意をもった司書がいる図書館の方が、いい図書館であると僕は思って
いる。

実際に最近引き受けたレファレンス事例で、市内に昭和30年代にあったある
施設の、つくられた経緯と廃止された経緯が知りたいというものがあった。
あるスタッフは市史から調べ、別のスタッフは新聞記事を探すなど即座に動
き出して、すぐにある程度の資料は揃えることが出来た。
だが、これだけではないはずだと直感した別のスタッフが、市の広報のバッ
クナンバーを読んで、より多くの情報を持ってくることができた。
どれだけ資料に触れ、知っているかで飛躍できる。普段から質問に備える意
識で棚を見ていたかどうかという違いもあると思う。
これを調べたスタッフが、「司書として質問されて、相手が満足する返事が
できないのは悔しいんですよ」と言っていたのだが、この点は僕もまったく
同じ気持ちだ。
そのための選書であり、レファレンスツールの編纂であり、スタッフ教育で
あり、貸出返却業務だと思う。

こういう意識を持ったスタッフが揃った図書館は心強い。
そんなスタッフをどうすれば増やせるのか、図書館員の待遇が悪化し続けて
いる中で、これはなかなか頭が痛いところだ。
「自分よりずっと良い待遇なのに、仕事ができない人がいる。それは許せな
い!」という声に対して、自分自身が納得できるロジックで説明ができない。
だったら公務員試験に受かって正職員になれば?と言うのは簡単だが、いま
この場で起きていることとの矛盾の説明にはならない。

僕自身は、市直営の図書館に地方公務員として勤務している。
同じ自治体直営といっても、内実は各自治体で随分差がある。
専門職として雇用し、自治体内の分館などを経験しながら図書館員を育成す
るところもあれば、例えば市民課から来て2年たったら水道課に移るように、
どんどん人が替わっていくケースも少なくはない。

僕が知っていることは限られているので、一般論として述べるには弱いかも
しれないが、大学図書館公共図書館で10年間勤務してきた者の実感として、
以下ちょっと書いてみたい。

大学も市も、僕は親機関の事務職員という身分で図書館に配置されてきた。
親機関にあたる学校法人や役所には、たくさんの課や係があって、ごく少人
数で動いているようなセクションが多い。
そういった部署と比べると、図書館というのは相対的に大所帯なので、例え
ば病み上がりの職員などのリハビリ施設、あるいは病んでしまった職員のサ
ナトリウムとされてしまいがちだ。
実際に、大学にいた頃は40代の職員が2人、50代前半の職員が1人亡くなって
いる。たった10年足らずの間にだ。
本部の意図もわからなくはないが、これでは資料提供の構築におけるサービ
スとその下支えをやろうという理念を持った、長い期間を見据えた機関とし
て、うまく機能するわけがない。

ここを突破し、市民のためにより良いサービスができる人材を確保しようと
動いて一定の成果を挙げたのが、千代田図書館だったように思う。
淀んだ血を入れ替える荒療治として、指定管理者への移行に踏み切って成果
を上げたという点は、もっと評価されてもいいんじゃないかと思う。

今まさに僕が頭を抱えているのは、この部分なのだ。

ただ問題は、指定管理者がミッションをどう考えているのかだろうとも思う。
どういう司書をめざすのか、本や参考調査等に関するエキスパートを育成す
るため、資料収集とか調査とかいった、直接的には数値化した評価に繋がら
ず、何十年も先までを想像し、誰かが求めるかもしれないという物まで目配
りができる司書、そういった人の育成ができるように考えているのだろうか?
収益に直結しないので企業としては手をかけにくそうな部分に思えるが、そ
こが大事な部分なのだと僕は思う。

それと同時に、ホテルや高級デパートのような接客を望む利用者には、率直
なところ、そういう方にはそういった接客サービスを受けられるようなとこ
ろへ行き、お金を払ってサービスを受ければいいのではないかと思う。
決められたマニュアル的な応対に徹するよりも、困った人が気軽に聞ける空
気感や、求めているものを臨機応変に察知する感受性、文献や参考資料に関
する知識の高さが必要であり、むしろ汗だくになって書庫を這い回り、利用
者と一緒に解決を喜びあえる司書でありたいし、そんな後輩司書をたくさん
育てたい。

             *   *   *

僕の勤務先は、図書館と市民情報センターとが同居する複合施設だ。
図書館の中だけが市直営で、他は財団法人が指定管理者となって運営してい
る。
最近、こういうタイプの施設がどんどん増えている。

施設運営は、各ブロックごとに複数の企業が入ったりして、内実は一体感が
欠けているのだが、外から見たら同じ施設だ。
あちらのことは別の窓口でお願いしますと言われたり、各窓口での回答がバ
ラバラだったら、来た人は納得できないだろうと思う。

こういう流れに対し、僕は施設を一体として運用しなければ、ポテンシャル
がフルに発揮できなくてもったいないという感じがしている。
内部での連携は、幹部層の会議ではなく現場スタッフの意思疎通によるとこ
ろがどうしても大きい。

ある複合施設のスタッフに、総合案内とレファレンスカウンターの機能の違
いを聞いたところ、会社が違うからあちらのことはわからないと言われたこ
とがある。
何億円、何十億円もかけて自治体がつくった施設の運営が、それでいいとは
思えない。
このあたりは書くと長くなるので、次の機会に踏み込んで考えてみたい。

             *   *   *

これまで僕は、Webサービスにに関する話を多く書いてきたこともあり、そう
いう内容の講演も求められてきた。
いま考えたいのはむしろ「Webでの情報発信→実際の図書館の蔵書や提供でき
る資料」ということだ。
人と資料・情報の媒介という立ち位置から、このあたりを今後冷静に考えて
みたい。

僕の勤務先はWebサービスで業界内で注目を集めているが、本当に見て欲し
いのはそこではなく、雑誌のチョイスやそれらを永久保存して未来の利用に
備えていることとかを含め、所蔵資料そのものだと思っている。
そこらへんのことを地域の方に伝えられるよう、今年は力を入れたい。

例えばメルマガを印刷製本して公開したり、地元の書店では手に入りにくい
ものを並べるように意識していたり、雑誌を永久保存することが評判となっ
て、県外の方からも雑誌の寄贈が相次いでいる。
郵趣」という切手コレクター向けの雑誌を創刊号から寄贈いただいたり、
「収集」というコイン雑誌、いくつかの女性誌の創刊号からのフルセットな
ど、いろいろと寄贈いただいて、すべて永久保存するため製本の予算を確保
し作業に取り組んでもいる。
こんな具合に、公共図書館が数年で廃棄処分してしまうような一般誌の保存
にも力を入れてきた。
こういった部分にも注目して欲しいし、図書館が持つ蔵書を活かし、図書館
間の連携でできる情報提供や発信にも今後はもっと力を入れなければと思っ
ている。

田圃
    http://d.hatena.ne.jp/t_rabi

福島県いわき市立総合図書館で職員研修の講師。
お題は「図書館システムとWebサービス」。
岡崎市立中央図書館の事件を例に、SEと図書館員の望ましい関係について中心
に説明。
図書館員もシステムやWebについての一定の知識が必要だが、独学は厳しい。
だからSEに何でも質問して、仲良くなっちゃえという方向の話で、協力し合って
市民にサービスを届ける仲間だという意識は持った方がいいですと話した。
他に、図書館員同士のコミュニティで相談しながら、一緒に前に進もうという
ことで、公共図書館Webサービス勉強会についても紹介。
この勉強会の話と絡めて、ここ1年間で当館が実施してきた研修や対外活動を
説明して終了。
体調が絶不調でしたが、どうにか役目は果たせた…ような感触でした。

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■「図書館の壁の穴」/ 田圃
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第43回 外部Webサービスとの付き合い方

最近、Amazonのレビューやレコメンド機能、Googleのサジェスト機能などを
図書館システムと組み合わせることで、日常的に使っているWebに近い利便
性を実現しようという動きが見られる。
そんな仕組みを既に取り入れている公共図書館もある。

実際にそれを使ったところ、そんなに違和感はないのだが、中身はブラック
ボックスだというところが、やはり気になって仕方がない。
この路線に乗ってしまうと、ステルス・マーケティングに公立図書館が協力
するのかと突っ込まれたときに、答えに窮するんじゃないだろうか?という
心配も拭えない。

食べログ」のやらせ投稿問題など、普段からWebを多用している人にしてみ
れば、大したこととは思わなかった方も多いのではないかと思う。
僕自身も、恣意的な情報操作もあって当然という理解の上で、「食べログ
に限らず多くのサイトをいつも普通に利用している。

ただしこういった外部情報源の信頼性を、どう図書館利用者に伝えるのかと
いう、所謂メディアリテラシー教育について、もっと広がる前に議論されて
も良いのではないかという気がしている。
このまま「外部の膨大なデータと図書館を結びつければ、もっといいサービ
スができる」と突き進んでしまって良いものだろうか。

佐賀県武雄市の図書館が、TSUTAYAのTポイントカードを図書管理用カード
にするという話も最近は出ている。
貸出履歴は個人情報ではないので、TSUTAYAの購買履歴と同様にTSUTAYAが把
握しても構わないと市長は考えておられるようだ。
連携したシステムをどう作るのかなど今後の課題は様々あるので、現時点で
○とも×とも断じにくいところはあるが、少なくとも個人的な病気や悩みご
とについて図書館の本で調べるようなことも個人情報ではないとは、到底言
えないだろうと思う。

ず・ぼん14」(ポット出版.2008.9発行)に掲載された座談会で、僕は外部
サービスではなく、自治体が自前のサーバーで情報を保存し提供していくこ
との意義を語ったことがある。
あのときは、データを恒久的に保存する責任という意味で、自前でシステム
を構築した方がいいと述べた。

だが最近のWebの動向を見ていると、信頼性や責任の所在という意味でも、
千葉県の成田市立図書館が展開している自前のデータに基づく貸出履歴を利
用したレコメンデーションのような方向性が、やはり本当は好ましいように
思える。
利用者自身が、履歴を利用したレコメンドサービスを希望するかどうかを選
択する方式で、機能しなければ履歴は保存しないなど、個人情報保護への配
慮も行き届いている。
それを構築する予算は、そう簡単には確保できないと思うが、いま目標とす
べきは成田市立図書館のモデルだと思っている。

              *   *   *

あの大震災の時に、僕自身にとってtwitter2ちゃんねるの情報はとても
ありがたかった。
だがあのときに、ああいった情報を自己責任で活用できた人ばかりではない
だろう。
ガソリンスタンドの入荷情報などもWeb上ではある程度は追えたが、それを
活かせた層は限られていただろう。
また、ガセネタに振り回された人も相当いたはずだ。風評被害などはその最
たる例ではないかと思う。

情報にアクセスできるというスキルも確かに大事なことではある。
だがその時に、その情報の信憑性について根拠をきちんと確かめて行動した
人がどれだけいただろう?

そうしたことも含め、図書館司書が市民に対してどんな情報ナビゲーション
をすれば良いのか?どこまで前に出るべきで、どこからを自己責任だと言え
ば良いのかという、このあたりの現在地の認識や今後のベクトルといったこ
とについて、そろそろ本気で考えないといけないのだろうと思う。

たぶん、情報源を紹介するところまでが司書の仕事であって、内容の解釈は
ユーザーの自己責任だという考えの図書館が現状はほとんどだろう。

もちろん、図書館に置いてある本の中の一語一句についてまで自治体が責任
を持てるわけがないのだから、Webについてもそのスタンスが最終的な結論
としては正しいのだと僕も思う。
でも、いまのWebに関しては、それで済ませて良いとは思わない。
Webは本とか雑誌といった括りと同列で、要は媒体の種類でしかない。
だから、当たり前だが一概にWebは正しいとか胡散臭いとか言えるものでは
ない。
それならば個々のコンテンツの評価を、情報仲介者として司書はもう避けて
はいられないのではないかということを、もっと正面から考えた方がいいと
思う。

田圃
    http://d.hatena.ne.jp/t_rabi
 7月に図書館問題研究会の全国大会@仙台市の分科会でお話しします。


※結局、体調不良で仙台は辞退してしまいました。
 いつか借りを返さなきゃ…!

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■ 図書館の壁の穴」/ 田圃
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第42回 続・場としての図書館

今月、僕の勤務先では「震災からの復興」というテーマで資料展示を行って
いる。
当市は蔵の街として歴史ある街並みが特徴の観光都市ということもあり、古
い建物も多いことから、震災で一部倒壊となった家屋が多数あった。
今なお産業面で震災の打撃は大きいが、こと日常生活に関しては去年の春先
には、ほぼ回復した状況にあった。
普通の日常に戻ってしまうと、どうしてもやはり防災意識が日ごとに薄れて
いくものらしい。
僕自身は親戚が釜石市にいることもあり、昨年の春、陸前高田から釜石の沿
岸部などへ行った際のことを意識的に思い出すことも多く、毎日、河北新報
岩手日報のサイトをチェックしているが、日常的にそれを考え思い続けて
いるのかと問われると、正直心許ない。
被災地に縁がなかったりすると、遠いことのように感じている人も、もはや
少なくはないのだろうという気がする。

このメルマガのvol.435に、知り合いの仙台の図書館員さんが被災され、ご
自宅を失うなど大きな困難に直面していたことを知り、職場の有志と応援に
行ったという話を書いた。

今回、図書館で「震災からの復興」というイベント棚を展示するのにあたり
当館司書の選定以外に、彼が実際にどんな本を復興に役立ててきたのかを伺
い、彼のセレクトした本で棚をつくらせていただいた。

こちらの図書館がつくった棚では、地域の復興に関する話題を主とするとと
もに、東日本の各被災地を俯瞰した復興関連資料なども展示している。

仙台の彼がセレクトした棚では、被災期・避難期・復旧期それぞれのフェー
ズで実際に役に立った本を紹介している。
実用的な側面にのみこだわる必要はなく、シャンルに偏らず、被災時の読書
体験の紹介などもと依頼したことにより、予想以上に文芸書なども入り、バ
ラエティに富んだ棚になっている。

この展示期間中に、棚をつくった本人が市民に向けて直接話をする機会を設
けようと試みたところ、「被災したことを忘れられてしまうのが一番つらい
から、そういう場を用意してもらえるならば喜んでやらせて欲しい」と快諾
していただけた。
「被災時の事ばかり聞かれて辛い思いをするかもしれないが、ともかく足を
運んでいらした方達の聞きたいことに お答えしたい」と彼は言い、さらに、
「来場された方に何か「残るモノ」をお渡しすると、少しは忘れないでもら
えるだろうか?」という言葉を聞き、人々の記憶が風化していくことが、本
当にたまらない気持ちなんだな、と痛切に感じた。その思いの大きさを思う
と、まだまだ何も終わっていないという現実の一端を垣間見る思いがした。
そのトークの中で、自分のつくった棚の意味も自ら語ってもらうよう頼んだ
のだが、それは市民にその資料を見て欲しいということもあるし、派生して
他の資料に気づいてもらおうという意図もある。
また、文字ではなくナマの人がライヴで本を紹介することが、図書館でもで
きるという点にも関心を持ってもらえたらと思う。
極端に言えば、図書館が扱うのは本だけでなく、人が発する情報や人そのも
のもまでも扱うんだというところも伝えられたらいいと思っている。

ということで、当館のスタッフ以外にも他県の司書さんが何人もボランティ
アで手伝いを志願してくれるなど、かなり盛り上がった感じでイベントの準
備を進めてきたのだが…あるタイミングで状況が急変してしまった。

ややこしい大人の事情により、当座このイベント棚のうち、トーク部分の企
画は、当館では見送らざるを得なくなってしまったのだ。

前回この連載で、僕は「場としての図書館」という文を書いた。
その手始めとして、これは必ず成功させたいと思っていたのだが…

ところが捨てる神あれば拾う神ありで、隣市の公民館を会場に開催したらど
うかと即座に動いてくれる方など、何人もの同業の仲間たちがこれをどうに
か実現させようと、猛烈な勢いで奔走してくれた。

まずは筑波大学附属図書館さんに、こちらの意志を継いで仙台の彼を招いて
の講演会を催し、僕の勤務先のイベント棚の紹介まで引き受けていただける
運びとなっている。

 ○筑波大学附属図書館
  「震災から学ぶ本棚 -IMAGINE THE FUTURE with books.- 」
   http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/w5lib/?p=1971

こういうネットワークは本当にありがたい。

技術的なことでも業務上のことでも、はたまた職場の人間関係のことでも、
普段の会話のお題は何だって構わないが、ともかく困ったときに相談しあえ
るコミュニティがあることはやはり大きい。

自分が立ち上げて、たくさん恥をかきながら引っ張って、全国各地に広がり、
現在は50名超に膨らんだ「公共図書館Webサービス勉強会」の人たちの協力
に本当に支えられ、応援してもらった。
時にはこんなこともあるから、恥をかいたり苦しもうとも、自らを晒して行
動することも悪くはない…という気がしている。

田圃
    http://d.hatena.ne.jp/t_rabi

東日本大震災における被害・復興の状況報告」をテーマとした研修会で、事例報告をしてきました。
私の前に、福島県いわき市笠間市潮来市取手市の図書館さんからそれぞれの館の被害・復興の報告が行われ、一番最後に登壇したのが私でした。
私への研修委員さんのオーダーは、東北学院大支援活動についてよろしく、ということだったので、自分のところの被害状況を軽く話した後は、仙台との関わりや支援活動の報告にほぼ終始しました。
自分の番を待っている間、「場違いじゃない?こんな発表していいのかな?」とも思いましたが、公共図書館Webサービス勉強会というコミュニティがあったから仙台での支援活動できたわけで、県内の図書館間でもそういうコミュニティがあれば「明日から肉体労働が続くから○○図書館に男性を何人か回して欲しい」とか、何か相互に連携できたと思うし、だから今こそ、そうしたネットワーク・コミュニティについて、何らか県内全館で合意できないものでしょうか?という提案で締めてみました。

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■ 「図書館の壁の穴」/ 田圃
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第41回 場としての図書館

インターネットや電子書籍の充実が、書店や出版界ばかりか図書館の存在に
もいよいよ影響しはじめそうな2012年。
ここは座して待つのではなく、積極的に何か仕掛けてみたい。

公共図書館が必要だと多くの人に思ってもらうには、無料で本が借りられる
場だというだけでは、遠からず行き詰る。
もう新刊書店の店頭にないような本や、貴重な郷土資料も図書館がしっかり
保存しているということの重要性や、市民の情報要求に即座に応えられる司
書の必要性、さらには読書推進とか文化がどうだと言ったところで結局は財
政難なのだから、ない袖は振れないと首長や当局に言われてしまったらお終
いだ。

そこでひとつ考えられるのは、やはり場としての図書館の価値を高めること
ではないかと思う。

例えば、千葉県立西部図書館の「まなびトーク」や世田谷区立図書館の「学
びのプレゼン〜学習活動発表会」のような、図書館資料を活用して調べ、そ
の成果を図書館で発表する試みは面白いと思う。
また、アメリカでは図書館資料を使って地元の歴史に関するWikipediaの記
事を書くイベントを行った事例もあるらしい。

 ○アメリカの事例はこちら
  http://current.ndl.go.jp/node/19871

こういうことも、今後真剣に企画してみても良いと思う。

それから昨年の10/30に秋葉原で開催され話題を呼んだビブリオバトルも興
味深い。

 ○ビブリオバトル公式サイト
  http://www.bibliobattle.jp/

既に書店や図書館での開催事例もあるので、運営のノウハウを教えてもらう
こともできるだろう。
年末、Code4Lib JAPANの大忘年会の席で、2011年首都決戦で審査員特別賞を
受賞された「ビブリオお兄さん」こと常川真央さんのデモンストレーション
を間近で拝見させていただいたが、あれは面白かった。
こういった参加型のイベントを考えても良いだろうと思う。

本と人だけでなく、本を介して人と人も繋ぐことができる、そんな可能性の
ある場に図書館が発展するのも、地域の情報拠点として存在感を発揮できる
ひとつの方向性ではないかと思う。

              *  *  *

ところで、長年図書館で働いている私だが、図書館の資料はやっぱり探しに
くいんじゃないかと思うことが多い。
例えば、漠然としたイメージで写真集を探そうと思った場合には、OPACはほ
とんど役には立たない。
カウンターで図書館員に質問するにしても、漠然としたイメージを言語化
るのは難しいし、そもそも図書館員に質問すること自体、結構ハードルが高
いことだろうとも思う。
現に「利用者の声」というご意見箱に、図書館員を「店員」と書いてこられ
る方も多い。
そういう認識の方は、レファレンスサービスの存在も恐らくはほとんど知ら
ないだろう。

図書館で十数年働いている僕でもこう思うくらいなのだから、初めて図書館
に来た人は、どこから手を出せば良いのか途方に暮れることもあるだろう。

だがこれについては、遠からず検索システムの機能向上でかなり補えるのか
もしれない。
郷土資料などは、自館の目録データをどんどん自力で整備しないと始まらな
いと思うが、それ以外に関しても例えばNDLやAmazonGoogleAPIを使って
OPACと連携させるなど、何かしら検索精度の向上策はありそうにも思える。

いまは誰もが検索できるスキルを備えているわけではない、という声もあり
そうだが、先々を考えると、そこはそう心配しなくても良いのかもしれない。
システムも進化するし、日本のインターネットの普及率を考えると、いまの
子ども達が成人するころには、Googleのような感覚で手軽に検索できるよう
になるだろう。

では今現在の検索端末の操作をどうするのかと問われれば、図書館員が支援
するとしか言いようがない。
でも、検索端末の操作支援が図書館員の恒久的なメインテーマにはなり得な
い。
いまは、いずれ大多数の人が簡単に探せるようになるための過渡期なのだと
思う。
バックヤードでのデータの整備や調査方法についての情報収集など、求めら
れた本により高い確率でナビゲートするために、いまやらなきゃいけないこ
とは他にいくらもある。

              *  *  *

本にたどり着く手段も、場としての図書館の機能も、何もかもが過渡期だか
らこそ、今はいろいろ試行錯誤ができる。

もちろん税金で運営しているのだから、費用対効果の検討や実施したことの
説明責任も当然伴うわけで、これは苦しくも楽しい時代だと個人的には感じ
ている。
だから今年も、失敗を恐れずにいろいろなことを試してみたいと思う。

田圃
    http://d.hatena.ne.jp/t_rabi
    今月末の茨城県図書館協会の中堅職員研修で、少しだけ登壇します。