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■「図書館の壁の穴」 /  田圃
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第46回 専門用語再考。

図書館体操をご存知の方は、このメルマガの読者にどれくらいいるのだろう
か?
http://gigazine.net/news/20121129-library-gymnastics/

近頃、図書館総合展などでも披露されたこのパフォーマンスは、図書館員向
けの防災や危機管理を意識しての啓蒙活動ということなので、話題になった
り注目を集めるのは、良いことなのだと思う。

だが、これに関連したTwitterでのやり取りの中で、地震があったときの図書
館員の対応として図書館体操では「書架から離れてください!」と叫ぶエク
ササイズがあるのだが、それについて疑問が呈されていた。

来館者に対して書架と言ってもわかりにくい。本棚と言う方が良いのではな
いか?とのことだ。

確かにその通りだと思うと同時に、普段私たち図書館員が、いかに図書館利
用者の感覚と乖離した図書館用語を多用していることかという点について、
少し考えさせられた。

例えば参考図書・配架・閉架・レファレンス・書誌・相互貸借などといった
言葉は、公共図書館を利用する様々な市民にとって、すんなり受け入れられ
るものではないだろう。

サービス業である以上、ユーザーに言葉が伝わらないと仕事にならない。
だから、図書館用語を普通の日本語に置き換えることも必要かもしれないと
いうことを、最近意識している。
当たり前に使ってきた言葉の意味を考え、日常語に置き換える作業は、案外
難しいが面白くもある。

            *   *   *

以下、幾つか宣伝。

1.本が出ました。

 何度かこのメルマガでも言及してきましたが、国立国会図書館と雑誌のオ
 ンライン書店Fujisan.co.jpの配信する目次情報のRSSを利用した、新着雑
 誌記事速報を紹介する書籍が刊行されました。
 これは、僕の勤務先で当時働いていた牧野雄二くんが開発したもので、牧
 野くんと共にブラッシュアップに協力いただいた野田市立図書館の川嶋斉
 氏との共著です。
  「新着雑誌記事速報から始めてみよう
   -RSSAPIを活用した図書館サービス」
   牧野雄二,川嶋斉 著
   発行者:日本図書館協会
   ISBN :978-4-8204-1219-9
   定価 :\1,680

2.筑波大学知的コミュニティ基盤研究センター、図書館情報メディア系が
  主催するワークショップ

 「公共図書館のこれからを考えるワークショップ〜知の交流・創造・発信
  を楽しみ、元気なコミュニティを育む知的広場〜」が2/22に開催される
  予定です。
  私を含め5〜6人の公共図書館の方々と、筑波の先生たちが登壇します。
  会の後半は、かなりフラットな感じの座談会みたいなものになる模様で
  す。対象は図書館員・図書館研究者&学生・図書館に関心のある一般の
  方々とのこと。
  詳細は後日、日本図書館協会のメルマガや、国会図書館のカレントアウ
  ェアネスポータルなど図書館系の情報サイトに出る予定らしいです。
  私も自分のブログに掲載しますので、ご関心のある方はご確認の上、お
  越しくださいませ。

3.ゆうき図書館3月イベント棚

  茨城県結城市立ゆうき図書館で、3月に震災関連の展示を行います。
  あれから2年を経て、どんどん記憶が風化していくことを懸念し、みち
  のく図書館員連合(MULU)の協力を得て、彼らに本を選んでもらい紹介文
  も書いていただく方向で、いま当館スタッフが調整中です。
  同じ東北でも被災の度合いなどもひとそれぞれ違いもあり、実際にどの
  ような本や資料が役立ったのか、また一昨年の震災からどのような本を
  読み、支えになっていたのかなど、それぞれの体験を元に紹介したいと
  思っています。

   ※MULUは、東北の図書館員同士ができるだけ顔を合わせて交流する場
    を作ろうという趣旨で結成されたコミュニティです。

  他の図書館の方々を大勢巻き込んでのこういう企画は、あまり例がない
  と思います。ご協力いただくみなさんに感謝です。
  よろしければぜひ棚をご覧いただければと思います。
  その棚との連動企画ということで、3/16にゆうき図書館で庄子隆弘氏に
  よるトークイベントを催します。
  津波の被害からの復興に尽力されている彼は、昨年筑波大学附属図書館
  で復興についての講演をされました。
  それから1年を経てどんな話が伺えるのか興味深いところです。
  当日は図書館が通常開館なのでイベントスタッフが足りず、企画した私
  としてはかなり困っていましたが、知り合いの図書館員が次々と手伝い
  を申し出てくれました。
  当日のヘルプ要員は数名ですが、MULUと公共図書館Webサービス勉強会の
  計130名近くの各地の図書館員に協力を仰いでの企画。
  各館、予算も人員も右肩下がりの状況ですから、こういう協力関係で図
  書館サービスを良い方向に持っていくきっかけにできれば、などと思っ
  ています。
  なお、この棚企画そのものをウチの図書館で専有するつもりはありませ
  ん。こういった企画はシェアしていいんじゃないかと思います。
  他館で、あるいは書店さんでこの企画にご関心のある方、ご連絡下さい。
  開催までのプロセスや内容について、可能な限りお伝えします。
 
田圃
    http://d.hatena.ne.jp/t_rabi