([本]のメルマガ vol.417より)

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■ 「図書館の壁の穴」/ 田圃
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第36回 雑誌と新聞のこと。

1/4の読売新聞に「図書館 雑誌充実に民間の力」という記事が掲載された。

これは東京都立多摩図書館の「東京マガジンバンク」が、「欠号補充大作戦
」と銘打ち、雑誌の寄贈を呼びかけていることを取り上げた記事で、同様の
試みとして、僕の勤務先がホームページに欠号リストを掲載し、寄贈を呼び
かけていることも紹介されている。

普段個人で雑誌を買っても、保存するスペースには限度があるので、古紙回
収に出すなど廃棄してしまうケースが多いのではないだろうか。
廃棄する前に図書館の所蔵を調べて、欠けているものを寄贈していただける
くらいに、市民の日常生活の中に当たり前に図書館があるようになって欲し
いと思いつつ、僕は欠号リストを公開した。
だから今回、こうした記事が新聞に掲載されたことは、とてもありがたい。

記事のお陰か、早速近郊の方から「季刊銀花」を全巻まとめて寄贈したいと
いうご連絡をいただいた。
ところが「季刊銀花」は既にバックナンバーを全巻所蔵していたので、保管
コストを考えると、僕のところで引き受けるのは難しいということになった。
そこでそれを先方に伝える際、県立図書館には普及課(協力課)といった各市
町村の図書館と連携する窓口があるので、そちらに相談すればどこか引き受
けてくれる館を探してもらえると思うと申し添えた。
その後はまだわからないが、あの「銀花」がどこかで末永く役立って欲しい
ものだと思う。

そしてその翌日には、東京の方からジョギングやマラソンの雑誌「ランナー
ズ」のバックナンバー約30年分を寄贈したいというご連絡を頂き、こちらは
未所蔵の2008年4月以前のものをお送りいただけることになった。
さらにその次の日には、記事を見たという千葉県の方から、文藝春秋社の「
マルコポーロ」全巻と「CREA」の創刊号から約8年分をお送り頂けることとな
った。

これまでも、時折こうしたご連絡を頂いてはいたが、こう立て続けに頂ける
ことは珍しい。やはり新聞の力は強力だ。

              *  *  *

ところで、その読売新聞の「図書館 雑誌充実に民間の力」という記事が、
どこまで届いているのかが気になったので、とりあえず僕の主催する公共図
書館Webサービス勉強会に問いかけてみた。
すると、メンバーのひとりがすぐに調べて教えてくれて、意外なことがわか
った。
彼が各地の知り合いに声をかけて確認したところ、関東甲信越東北、中部、
関西、そして九州で記事の確認ができたものの、一部地域では確認できなか
ったのだという。
また掲載されていても、社会面だったり教養面だったりと地域によってバラ
つきがあり、写真を掲載しているところもあれば、していないところもあっ
たらしい。
地方面以外はなんとなく全国共通と思いがちだが、全国紙は各本支社が管内
のニュースに差し替えて紙面を作るため、地域によって多少違うものらしい
ということがわかった。

同日の朝刊でも、刷った時間によって多少の内容変更があることは割と広く
知られている。
例えば少々古い話になるが、スポニチに掲載されたアトランタ五輪の有森裕
子さんの写真は、早い時間に刷った宅配版にはゴール時の笑顔の写真が、遅
い時間に刷った駅売り版にはウィニングランで号泣する写真が掲載されてい
た。
図書館にあるのは宅配版だし、スポニチ東京本社発行分のバックナンバーは
過去2か月分は購入できるが、それより古いものは手に入らない。
もし、号泣する有森さんの写真が載った紙面がみたいなどというレファレン
スがあったら、対応はなかなか難しいだろうと思う。

例えばネットで見つけた新聞記事の情報から、原紙の記事を探そうとした場
合、地方では夕刊の入手が困難だったり、朝刊であっても差し替えられて何
版目かで落とされた記事だったとしたら、肝心な現物にはたどり着けそうに
ない。
書籍は版ごとに別物として図書館では扱うが、数時間のうちに差し替えられ
る新聞の版ごとの記事にまで対応するのは、今のところ不可能だ。
いままで雑誌記事が網羅的に探せないことは気になっていたが、実はそれ以
上に新聞記事の調査は、突き詰めると難しそうだ。

各図書館がホームページなどで紹介している新聞記事の探し方には、縮刷版
やマイクロ版、CD-ROM、データベースの案内などがよく掲載されているが、
どこかの支社の記事を探すとか何版目のものを探すには、といった話はまず
目にしたことがない。
新聞社に問い合わせたところ、最終版以外は入手が困難だということも、今
回調べてみてわかった。

これは考え始めると、ちょっと途方に暮れそうな話だが、新年早々にこうし
た広大な未開拓の場に触れられたことは、良い刺激になった。

田圃
    http://d.hatena.ne.jp/t_rabi/