([本]のメルマガ vol.249より)

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■「図書館の壁の穴」/田圃

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第8回 雑誌記事を探せるようにしたい!

 雑誌記事を図書館で探す場合、まずは端末で検索する方が断然効率が良い
場合が多い。
終刊になった雑誌や、何年も前のバックナンバーは、書庫で保存されている
ことが多いので、検索端末でしか探しようがなかったりする。
また図書館によっては、分野ごとにフロアを分けて500誌も1,000誌もの雑誌
を置いているところもあるので、そのようなところは尚更そうだろう。

端末では、大抵タイトルや出版社名でしか検索できないことが多いのだが、
同時に目次も検索できれば、必要な情報にたどり着ける可能性はかなりアッ
プする。
例えば、鳥インフルエンザというタイトルの雑誌はないと思うが、そういう
タイトルの記事ならたくさんある。
そんな探し方ができれば、図書館で所蔵している雑誌の利用価値は、今の何
倍にもなるんじゃないかと思う。

国立国会図書館では2006年3月現在、9,741誌もの雑誌の記事索引が日々デー
タ化され、ホームページ上で無料で検索出来るようになっている。
4年位前までは、年4回CD-ROMで刊行されていて、年額10万円以上もしたデー
タがこうして無料で利用できるようになったのだから、画期的なことだと思
う。

この雑誌記事索引の収録誌には選定基準があって、実用誌・広報誌・同人誌
・市町村刊行物・文芸誌・美術作品誌・スポーツ誌・音楽誌・児童誌などは
含まれていない。
一部の週刊誌などを例外的に収録誌に加えているが、元々が学術的な雑誌を
中心に、調査に役立てるためにと始められたものだ。
だが、収録されていない雑誌にも調べものに役立つものはたくさんある。
国立国会図書館雑誌記事索引に、全国の公共図書館が分担して追加登録で
きたなら、より網羅的で役立つものになるんじゃないかと思う。

国立国会図書館主導で、すべての図書館を対象に雑誌記事索引共同作成・共
同利用プロジェクトを実施できたとしたら、多くの都道府県・市町村各図書
館のホームページや館内の検索端末で、所蔵雑誌のタイトルだけではなく、
記事名までもが検索できるようになるだろう。
プロジェクトに参加する各図書館は、その共同利用のデータベースに登録さ
れていない雑誌を持っていれば、責任を持って登録するということを、参加
ルールにしておくことで、ローカルな雑誌も網羅した強力な記事索引ができ
るんじゃないだろうか。
イメージとしては、大学図書館が共同で所蔵目録を作って相互利用している
NACSIS-CATと似たようなことがやれそうな気がするのだ。

これは国立国会図書館の政策決定の問題だけではなく、各館の予算や人の問
題など、クリアすべき課題が山ほどあるので、そう簡単に実現できるもので
はない。でも、もし実現できれば相当役に立つものが出来そうなのだが、ど
うだろう?
             *  *  *

国立国会図書館に頼るのではなく、例えば出版社のホームページにアップさ
れている目次情報を、図書館の雑誌検索に利用するのも面白いと思う。
RSSなどをを使えば、比較的容易にある程度の情報を集められる可能性はあ
るかもしれない。
けれど、目次がアップされていない雑誌も多いし、ホームページがないもの
もたくさんある。特に自治体や地方の小出版社、あるいは個人が出している
ような雑誌は、そういった面で対応が進んでいないものも数多い。
だから、そうしたシステムをつくるとしても、今のところは雑誌探しの補助
的なツールという位置付けで考えた方が良さそうだ。

             *  *  *

 大学図書館ではもう10年以上前から、書店から外国雑誌の納品データをフ
ロッピーディスク(現在はもちろんメール)で送ってもらい、それを図書館
システムに直接取り込んでしまう仕掛けが、割と普通に運用されている。
現在では、スエッツ社、丸善のMACS、紀伊国屋書店ACCESS等幾つかの外国
雑誌納品データフォーマットに対応した自動チェックイン機能(データを取
り込む仕組み)が、一般的な大学図書館パッケージシステムの標準仕様とし
て用意されているほど、雑誌納品に関する書店と図書館の連携は進んでいる

公共図書館では僕の知る限りこうしたことは行われていないのだが、勤務先
の市立図書館でも同じようなことはできるんじゃないかと思った。
さらにこの自動チェックインの機能に加え、書店に雑誌各号ごとの特集記事
名や表紙の見出しも入力してもらい、それも取り込めるようにすれば、単な
る仕事の省力化ではなく、検索機能のアップも実現できるはずだ。

実施するにあたって調べてみたところ、外国雑誌の自動チェックインは広く
実施されているのだが、国内雑誌のデータ受入に関する事例はほとんど見ら
れなかった。
これは、国内雑誌を扱う書店の体制、インフラ、ノウハウ等といった書店側
の問題や、大手数社のフォーマットに準拠すれば済む外国雑誌とは事情が異
なるといった、図書館システム業者の問題などが主な原因らしい。

勤務先は地方の市立図書館なので、購入する雑誌はほとんどが国内雑誌だ。
公共図書館が国内雑誌の自動チェックインを行った例がないので、システム
仕様の提案から開発まで、メーカー任せではなく、図書館主導で行う必要が
あった。
また、システム開発とは別に、こちらの指定するフォーマットでデータ提供
ができる書店を探さなければならなかった。
書店にしてみれば、特定の取引先にあわせたデータ出力の仕掛けをわざわざ
用意することになる。数百誌の雑誌を1年間買うという位の契約では、利益
はそう大きくはない。少なくとも、外注してシステムを開発したら割に合う
とはとても思えない。
だから、システムに関するノウハウを持つ、自社内で対応可能な書店でなけ
れば対応は難しいだろうと考えた。
まずは、地元にある個人商店規模の書店にデータ仕様の説明をしてみたのだ
が、技術的な話がほとんど通じず、発注したい雑誌の3割以上が不扱いだっ
たため、次に幾つかの大手書店に話を持ち込んでみた。

ところが、雑誌の取引だけでは収益が見込めないという理由で、データ云々
の話以前に取引を断られてしまうケースが続出した。
そんな中、ようやく三省堂書店から良い返事を貰うことができ、一昨年から
システム運用を開始している。

稼働から既に2年が経過しているが、今のところ大きな不具合もなく、順調
に運用できている。
例えば「タイトルは忘れちゃったけど、新会社法の特集が出ていた雑誌を探
している」というような場合にも検索できるので、実際に役立つ場面はかな
り多い。
それに、雑誌を検索したときに、各巻号の一覧画面で雑誌の内容の一部が確
認できることの効果は、当初予想していた以上に大きい。

これと並行して、郷土関係の逐次刊行物については自館で目次を手入力し、
検索できるようにしようという取り組みを始めている。
まずは図書館スタッフが作業に取り組んでいるが、先々こうした作業につい
ては、青空文庫のような感じに工作員を募り、ボランティアでやってみるの
も良いのではないかと思い、準備を進めている。

追記:こんなシステムに興味があるという方は
   までご連絡ください。システム会社や書店にどんな提案を行い、実
   現に漕ぎ着けたのかをまとめた資料があるので、お送りします。

国立国会図書館雑誌記事索引http://opac.ndl.go.jp/index.html
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