([本]のメルマガ vol.255より)

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■「図書館の壁の穴」/田圃

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第9回 図書館ホームページを考える。

図書館のホームページは、この先どんな情報が得られるようになれば、もっ
と便利でより使いたいものになるだろうか。

ホームページは、所在地や利用案内、館の概要などを掲載した、これから図
書館を利用する人に向けた案内に絞ったものとし、それとは別に、図書館の
機能を利用するためのポータルを用意した方が、目的がはっきりする分、効
果的な情報提供が出来るんじゃないかと思う。

ポータルについては、「ポータル」というモノが存在するわけではなく、あ
くまで考え方のことなので、どうもわかりにくい。
図書館ポータルは、本や雑誌、データベースなど図書館が提供する様々な情
報と、貸出予約や購入リクエストなどのサービスを1つの画面で利用できる
ようにしたものだと一般には言われているようだ。

日常よく図書館のサイトを使っている人にとっては、わかりきっている貸出
期間や所在地の地図、フロアガイドなどの紹介、館長の挨拶など、更新され
ない情報は、ノイズでしかないというのは事実だろう。
そういう意味で、案内的なホームページと、図書館機能を活用する窓口とし
てのポータルとに分けてしまうのが良いように思う。

              *  *  *

公共図書館の場合、大学図書館よりも利用者層が幅広い分、それぞれ自分の
用途に応じた画面をカスタマイズして作るホームページのパーソナライズ化
というのは、非常に有効だろう。
このパーソナライズ化されたページ上で、様々な図書館サービスを提供する
形が、図書館ポータルとしては今のところ一番良さそうに思う。

京都大学をはじめ、幾つかの大学で実施しているMy Library機能と呼ばれる
ホームページのパーソナライズ化では、貸出情報の表示など個人向けの情報
サービスと、リンク集の作成などによる画面カスタマイズ機能、それに図書
館からのお知らせ表示機能などが用意されている。
また、キーワードを登録しておけば、それに合致する新着資料を知らせてく
れるSDIという機能や、購入リクエストの依頼機能、貸出予約機能など、
個人が図書館の窓口で受けるようなサービスも、このMyLibraryの画面上で
利用できるようになっている。

各大学が使っているシステムは、ノースカロライナ州立大学が開発したオー
プンソースのソフトウェア「MyLibrary@NCState」をベースに開発されたも
のらしい。
そーか、オープンソースか。だったら自分でも出来るかも?と思ったが、今
のところ、これには日本語サポートもなく、どうも素人が仕事の片手間に構
築できるほど簡単なものではないようだ。

SDI機能については、今では多くの図書館システムの標準機能になってい
る。
何もMyLibrary機能がなくても、情報をメールで配信することで、こちらは
比較的簡単に実現できる。
もっとも、SDIのためには、どんなキーワードを登録するとどんな結果が
出るとか、検索システムの仕組みの説明が不可欠なので、そこが難所だろう
と思う。
例えば「東京」と登録したために、出版地が東京の本が全部メールで届いて
はマズイし、「旅関係の本」などと登録したら、本当に書名が「旅関係の本
」という文字列を含むものしかヒットしない。
こうした説明が事前にきちんとできなければ、却って信頼を失う結果にもな
りかねないから、導入には注意が必要だと思う。


また、パーソナライズ化のメリットをより引き出す仕組みとして、大学図書
館では、蔵書検索と同時に契約している商用データベースや電子ジャーナル
なんかも串刺しで検索できるというシステムが、既に多数利用されている。

例えば札幌医科大学では、図書館の本と、医薬関係の学外データベースや電
子ジャーナルが一括で検索でき、検索結果が同時に表示され、しかもそれが
デジタル情報ならば、そのまま画面上で全文を見ることが出来る。
ここまでの情報がWeb上で提供できるのだから、確かに凄いと思う。
こういう仕組みは、リンクの集中管理とリンク先の決定を担う「リンク・リ
ゾルバー」と呼ばれるシステムによって実現されているものだ。

似たようなサービスを、外国雑誌を扱う書店のスエッツインフォメーション
サービス社も提供している。
これは、スエッツから購入している外国雑誌やオンラインジャーナルを論文
単位で一度に検索できるのに加え、そこに図書館側から所蔵資料の情報をア
ップロードしておけば、利用者はそれらすべてを全部一括で検索できるよう
になるというものだ。
もちろんオンラインジャーナルは、検索結果画面からリンクして、その場で
表示させることも可能になっている。

外国雑誌の記事検索やオンラインジャーナルのリンクという話だけでは、僕
のいるような地方の市立図書館にはあまり縁がないので、興味はあっても正
直なところ「そうなんだ〜」と理解するのにとどまってしまう。
だが、これに習って、国内の書店や取次が国内雑誌の出版情報や記事情報を
使って同じようなサービスを始めれば、とんでもなく便利なものになるだろ
う。

こうしたリンク・リゾルバーを使った所謂ワン・ストップ・サービスは、大
学図書館では2年位前から普及し始めている。
公共図書館ではそういう話は聞いたことがないが、こんな事例を参考に公共
図書館でもやれることを考えてみるのは、面白いと思う。

例えば日経テレコン21や聞蔵、日外webといったデータベースと自館のOPAC
との連携、あるいはオンライン書店古書店との提携で、図書館にない本に
も辿り着ける仕組みを考え、さらにGoogleなどのサーチエンジンも同時に検
索できるようにしておく。
そんな仕掛けによって、とにかく何かキーワードを入れて検索した時に、「
該当資料はありません」で手詰まりになってしまうのではなく、図書館の外
の情報源や、そこへのアクセス方法がわかる。そんな仕組みができればもっ
と便利になるだろう。

こんな考えで、僕のいる図書館でも、システムリプレイスのタイミングには
何かやってみようと密かに企んでいる。
まずはMyLibrary機能付の図書館システムを導入して、近所の大学との横断
検索・相互協力を実現して、それから書店や古書店や商用DBも、と際限な
くいろいろ思うのだが・・・あとは予算次第かなぁ・・・。
でも何とか、やれるところまでは頑張ってみよう。

              *  *  *

今回は、国立大学図書館対象の情報源から、市町村立図書館のホームページ
に参考になりそうなトピックを探し出してみた。

もちろんこうした先進事例を、どの図書館にもそのまま適用できると思って
いるわけではないが、こんな目先の仕事と直接関係のない情報が、何かのヒ
ントになる場合は結構多いものだ。

同じ公共図書館同士の情報交換も必要だとは思う。
でも、そこに閉塞感を感じるならば、いっそ別の業界からネタを拝借するつ
もりで広く情報収集してみれば、役立つ話はいくらでもあるんじゃないだろ
うか。最近、特にそんな気がする。

★版元ドットコムのシンポジウムは面白かったです。
 ポット出版の沢辺さん、その節はお世話様でした。

田圃