ゆうき図書館を会場に開催された研修会で、講師を務めました。
お題は「図書館員が知らなければならない図書館システムをめぐる現状について −岡崎市立中央図書館事件の問題点とは?−」。

このテーマについては、セキュリティの専門家の方や大学の方などがこれまでにも発言しておられますが、公共図書館員による発言は決して多くはありません。
そういう意味で、「これは火中の栗を拾う羽目になったぞ」と思いましたが、大事なことですから目を背けていても仕方がないので、引き受けてみました。

・ベンダーに丸投げで、私は知りませんという態度はもう通用しない。
・市民にサイトを公開する主体は図書館なのだから、責任を持とう。
・困ったとき、あるいはわからないことを何でも相談できる図書館員のコミュニティがあると、何かと助かりますよ。

−といったような話をして、Code4Lib JAPANと公共図書館Webサービス勉強会を紹介してみました。
この私の講演に続いて、当館の臨時・嘱託職員を含む4名がリレー形式で、東北学院大の支援から、9月のワークショップのことを紹介し、最後に再び私がコミュニティの重要性を語って午前の部は終了。
午後は、研修に参加された方の勤務先のシステムメーカーごとにグループを組んで、情報交換会。
その途中でCode4Lib JAPAN Workshopの私の担当する会の名物となりつつある、ゆうき図書館スタッフ手作りお菓子をお出ししてのティータイムも入れてみました。
県の研修でこういうのは、恐らく過去にはなかったことでしょう。お菓子によるおもてなし、大成功でした。スタッフには本当に感謝です。

予告通り、仙台でワークショップを開催してきました。

被災地のライブラリアンから、「関東の人たちはもう前を向いて研修などを積極的にやっているようだけど、自分たちはまだまだそんな余裕はない。前に向かえるよう手助けして欲しい」と頼まれたことをきっかけに開催したこの企画、今後も引き続き東北の司書さんたちと繋がっていく期待の持てる、良い出会いとなりました。
Code4Lib JAPAN公式サイトに、事務局の藤田さんがレポートを上げてくれています。
http://www.code4lib.jp/2011/09/559/

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■「図書館の壁の穴」/ 田圃
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第40回 イベントのお知らせ。

今回は、私が関わるイベントのお知らせを2つほど。

9/28(月)に、第7回Code4Lib JAPAN Workshopを仙台市で開催します。
お題は再び「新着雑誌記事速報を作ってみよう」。
6/13の潮来市立図書館の会で好評だった、ゆうき図書館スタッフの手づく
りお菓子つきのティータイムも催します。

  ○開催予告http://www.code4lib.jp/2011/09/526/

なお、このワークショップの終了後、夕方から仙台近郊の書店・出版関係
の方々にお声掛けして、交流会を行う予定です。

図書館員と書店・出版関係の方々とは、隣り合った業界ながら実際に接触
する機会は少ないものです。
ですからこの機に飲み交わし、一緒に何かを始めるきっかけの場になれば
幸いと思いつつ、現在準備を進めています。

近郊の書店・出版関係の方、またワークショップには参加できないけど夜
だけでも顔を出してみようという図書館員の方、こちらまでご連絡くださ
い。

  ○Code4Lib JAPAN事務局

 それともうひとつ。

 10月下旬に「図書館員が知らなければならない図書館システムをめぐる現
状について〜岡崎市立中央図書館事件の問題点とは?〜」というお題で研修
講師を務めさせていただく予定です。

 岡崎市立中央図書館事件とは、市民の方が岡崎市立中央図書館のWebサイ
トから、新着図書のデータを自動で取得するプログラムを実行した結果、同
サイトでの図書検索が利用できない状態になってしまい、その方が逮捕され
たという事件です。
 これは、図書館側のシステムに不備があったためで、市民の方が作られた
プログラムには実は何も問題はありませんでした。
もともとのシステムの不備に対応しなかったシステムベンダーと、ベンダー
に丸投げで何もわからず被害届を出してしまった図書館、専門知識がないま
ま事件にしてしまった警察、検察、裁判所の判断など、間違いが重なって逮
捕に至った事件だと、私は理解しています。

 事件からこのことについて、語ったり書いたりした公共図書館員は、まだ
数少ないので、講師役の私は結果的に火中の栗を拾うことになるでしょう。
 そんな様子も眺めてみたい(?)という方は、気軽にお越しいただければと
思います。

※ 主催者からまだ正式にアナウンスが無いので、ここには書きませんが、
  こちらは某県内の図書館員さんを対象とした研修会です。
  発表され次第、私のブログhttp://d.hatena.ne.jp/t_rabiでお知らせ
  しますので、ご関心のある方はぜひご覧ください。

              *  *  *

 
ということで、イベントのお知らせはここまで。

              *  *  *

 同じ図書館員同士であれば、たとえ自分のシステムに関する知識が乏しく
ても、情報交換ができるコミュニティはいくつかある。
 書店員さんや版元さんとの接点も、探せばいくらかはきっとあるだろうし、
接触する機会が少ないのであれば、今回の仙台の企画のように、自分達が場
を創っていこうと考えてみるのもおもしろい。
 そういう場を創りたいけれど、どうして良いのか困っているという図書館
員の方がいるならば、できる限り協力していければと思う。

              *  *  *

 最後に、僕自身が関わって実態をよく知っている2つのコミュニティを、紹
介しておきたい。
 いずれもこの連載で何度か触れたが、ひとつは僕の主催している「公共図
書館Webサービス勉強会」。
この会は、初心者の底上げを意図していることと、現場にすぐに効くことを
志向しているので、相談事に対するサポートは(保証はないものの)かなり手
厚いように思う。普段から無理のない範囲で気軽に継続的に学べることもメ
リットだろう。
この会では、岡崎市立の件について僕の勤務先でディスカッションを実施し、
それを会にフィードバックし、メンバーの意見を貰ったこともあった。

 それともうひとつは、Code4Lib JAPAN。
こちらは、アメリカで始まった図書館システム系エンジニアのコミュニテ
ィであるCode4Libの日本支部を目指して発足した団体で、日本の図書館員の
ICTスキルを底上げするため、各地でワークショップを開催している。
この団体のワークショップは単なる技術研修にとどまらず、その場を通じて
図書館員同士の横のつながりを作り、図書館をもっとよくしたい図書館員の
コミュニティづくりも意図している点が特徴だと思う。
こちらでは、岡崎市の件を踏まえてWebサーバーのログファイルを実際に読
むワークショップを、既に1年近く前に開催している。
 
 これらのコミュニティには、システムに関心の高い図書館員が大勢いるし
知識も技術も兼ね備えた、優秀な方も何人もおられる。
また、まったくの初心者で何もわからないという人も、違和感なくいられる
場となっていると思う。

 学ばないといけない、少しでも知っておきたいという気持ちさえあれば大
丈夫。気になった方は、まず気軽にこのあたりにお立ち寄りいただければと
思う。

田圃
    http://d.hatena.ne.jp/t_rabi

〜以下、Code4Lib JAPAN公式ブログと同じ文章です〜
受入雑誌の新着目次を提供すれば、もっと雑誌は活用されるはず。でもそんなリスト、手作業で毎日更新するのは難しいですよね。

一度つくったリストが毎週自動で更新され、それがそのまま提供できてしまう。そんな仕組みを構築するワークショップを、今度は仙台で開催します。

この機会に、あなたの所属館の新着雑誌記事速報システムを一緒につくりましょう。

このワークショップは、6月13日(月)に潮来市立図書館で開催した第4回ワークショップのリニューアル版となります。

今回は特に、実際にモノをつくることと、そのカスタマイズ方法の解説に力を入れます。

ちなみに潮来市でのワークショップの成果は、参加者の手によって次のとおり公開されています。

潮来市立図書館新着雑誌記事速報

筑西市立図書館新着雑誌記事速報

ご参加にあたっては、システムやパソコンの前提知識は一切不問です。

もし当日完成させることができなくても、きちんと最後まで講師がフォローいたします。

費用ゼロで、図書館システムに手を加えることもなく、Webサービスを推進できる好機です。

ぜひお気軽にご参加ください。お待ちしています。

また、第4回ワークショップ(潮来市立図書館)で大好評だった手づくりお菓子のティータイムを今回も予定しています。

この機会に出会った方々との交流も、ワークショップの大きな目的のひとつですので、お菓子を食べながらのコミュニケーションも、ゆっくりお楽しみいただければと思います。

なお今回は特別に、東日本大震災からの復興支援企画ということで、通常2万円のワークショップ参加費を、岩手・宮城・福島・茨城・千葉に在住・在勤の方に限り5千円でご参加いただけるようにしました。

たとえ赤字だろうと、今こそやらなきゃと考えたCode4Lib JAPANの決意と、熱い講師陣の気持ちにぜひご期待を。

みんなで一緒に、有意義で楽しい1日を過ごしましょう!

・期日:2011年9月26日(月)

・場所:仙台市民会館 第一会議室(〒980-0823 宮城県仙台市青葉区桜ヶ岡公園4-1)

・主催:Code4Lib JAPAN

・講師:川嶋斉(野田市立興風図書館)、笹沼崇(ゆうき図書館)、牧野雄二(ゆうき図書館)

 TA:飯島佐恵(ゆうき図書館)、石田好一(ゆうき図書館)、ふじたまさえ(Code4Lib JAPAN事務局)

・定員:最大30名

※貸出できるパソコンを18台ご用意しています。申込時にご希望をお知らせください。先着順。

※パソコンの持ち込みは歓迎です。その際は、無線LAN対応のパソコンをご持参ください。

・対象:不問 ※ただし、申込多数の場合、現役ライブラリアンを優先します。

・参加費:2万円 ※岩手・宮城・福島・茨城・千葉に在住・在勤の方に限り5千円。

【プログラム(予定)】

10:30 受付開始

11:00 開会、イントロダクション

11:30 レクチャー

13:00 昼食

14:00 ワークショップ

(1)新着雑誌記事速報をつくってみよう

(2)カスタマイズしてみよう

16:00 ティータイム&懇談/質疑応答:TA飯島さんの手づくりお菓子つき!

16:30 ワークショップ終了

 修了証授与、記念撮影、事務連絡

17:00 終了

18:00 交流会

地元の出版・書店関係の方も交えての交流会が企画されています。図書館の方の、交流会のみのご参加も歓迎です。

ワークショップ参加申し込み:http://bit.ly/c4ljp-ws07

交流会のみ参加希望の方は、 Code4Lib JAPAN事務局:office@code4lib.jp まで、ご連絡ください。

第7回Code4Lib JAPAN Workshopを、東日本大震災からの復興支援企画として、現在検討中です。
被災地のライブラリアン達が、一歩前に進むためのお手伝いをさせていただければと考えています。
WSの内容は「新着雑誌記事速報」を作ってみよう!です。
会場は仙台市内で、9/26(月)を予定しています。

詳細が決まり次第、また改めてお知らせいたします。

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■ 「図書館の壁の穴」/ 田圃
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第39回 ワークショップのことなど

3月14日(月)に開催予定だった第4回Code4Lib JAPAN Workshopを、ようやく
6月13日(月)に実施することができた。

ここで取り上げたワークショップの題材は、国会図書館と富士山マガジン
サービスが出している目次情報のRSSを利用した「新着雑誌記事速報」とい
うシステムで、参加者それぞれが、自分の勤務する図書館にあわせてつくっ
てみようという講座だったのだが、もしご興味がある方は、こちらをご覧い
ただければと思う。

○新着雑誌記事速報
 http://lib-yuki.city.yuki.lg.jp/room_ad/sokuhou/main.html

僕の勤務先も、今回会場を提供してくださった茨城県潮来市立図書館さんも
3.11のダメージが大きく、当初の予定から仕切り直しに3か月もかかってし
まった。
3月に参加申し込みをしてくださったみなさんには、大変なご迷惑をおかけ
してしまったが、それでもともかく無事に開催できたので、まずはほっとし
ている。

6月の開催直前にも大きな余震が続いていたので、当日はまず避難経路の案
内からスタート。基本的なことだと思うが、案外忘れがちになるので、これ
は今後も余震の有無に関わらず、忘れず最初にしておこうと思った。

当日の模様はCode4Lib JAPANのブログに掲載されているので、ご関心のある
方はご覧いただければと思う。

○Code4Lib JAPANブログ(6/21のエントリー)
 http://d.hatena.ne.jp/josei002-10/20110621

              *  *  *

この潮来の会に続き、今度は名古屋で「OPAC+」を扱うワークショップが開
催される。

○Code4Lib JAPANブログ(7/4のエントリー)
 http://d.hatena.ne.jp/josei002-10/20110708
(OPACとは - Online Public Access Catalogの略。 オンライン検索できる
図書館の蔵書検索システムのこと)

OPAC+というのは、ユーザー側が図書館OPACと他のサービスとをリンクさせ
たり、検索結果に書影を表示するなど、大幅に機能拡張できるシステムで、
今回メインの講師を務められる野田市立図書館の川嶋斉氏が発案・実装され
たものだ。

野田市立図書館(トップページ中央の検索窓が「OPAC+」)
 http://www.library-noda.jp/

この仕組みを教えていただいて、僕の勤務先でも非公式ながらこんなことを
はじめている。

○ゆうき図書館PLUS
 http://www.lib-yuki.com/#1

この仕組みを応用すれば、単に検索してノーヒットでしたで終わらないOPAC
が自らの手で作れるようになる。
その手ほどきを開発者自身から受けられるこのワークショップは、有意義で
魅力的なものになるだろうと思う。

              *  *  *

先の潮来で開催したWorkshopでは、参加したいけれど自館の復旧が済んで
いないので断念したという、仙台の大学図書館に勤務する友人がいた。

彼の勤務先は、男手が少ないこともあり、復旧作業が大変な様子だったので
こちらの職場の有志と共に、2度程作業の手伝いに行ったり、ささやかなが
らメッセージをそえて物資を送ったりしたことがある。
こういうことを書くと、善行自慢っぽいかもしれないなと、特に発言せずに
いたのだけれど、この動きを察知した他の図書館の方も、早速職場で募金活
動をして送金したりと、それぞれの立場で支援したことを知って、ちょっと
したきっかけが大きな広がりになるのを感じ、考えが変わってきた。
要は、必要としている人の役に立てばいいのだ。

現に、SaveMLAKによる東北学院大学中央図書館のボランティアツアーは、図
書館員によるボランティアの入り口としては非常に有意義だったと思う。

東北学院大学ホームページ「お知らせ」
 http://www.tohoku-gakuin.ac.jp/news/110627-4.shtml

ちなみに今回僕達が手伝いに行った、同大学の泉キャンパス図書館では、開
架フロアの書籍の落下防止のために、こんな(↓)工夫をしていた。

○棚の前にロープを張った画像
 http://p.tl/DlOJ

この結び方だと、結び目の位置が自在に変えられるので、本を取り出すとき
には少し緩めて、あとから再び張り直すのも容易だ。
何より、低コストである程度の安全対策ができるのが良いと思う。

ちなみにこの結び方は、こちらに詳しく掲載されている。

○ロープの結び方(千住消防団の方の個人サイト)
 http://www.roy.hi-ho.ne.jp/asunoro/s3cont/r_work/jizai.html

ともかく、この仙台の友人とのやりとりが発端となって、数か月後に仙台で
何かワークショップをやってみようということになり、いま準備を進めてい
る。
また現地からの要望として、ワークショップとあわせて仙台の書店や出版関
係の方も交えた交流会を催したいという話も出ている。
確かに、図書館と書店・出版業界は隣接していながら、リアルな接点が少な
いと感じているので、そういった意味でも良い機会になれればうれしく思う。

開催時期は、9月下旬くらいになるだろう。
本稿は隔月連載なので、次回にはきちんとお知らせできるよう進めていきた
い。

こうして東北との縁が深まったことを、今後も前向きな形で活かしていけれ
ばと思う。

田圃
    http://d.hatena.ne.jp/t_rabi     

6/13(月)、ようやく潮来市立図書館で「新着雑誌記事速報をつくろう」のワークショップを実施できました。
準備開始から約半年、諸々を乗り越えての開催は嬉しかったし、無事に終えることができて本当に安堵しています。

まだ余震の続く状況下での開催だったので、冒頭で潮来市立図書館長の船見さんに、避難経路の説明を入れてもらい、私が3.11以降の経過報告を行った上で、メイン講師の牧野氏に繋ぐという流れでのスタート。
その後の当日の模様は、この4月に那珂市立図書館からCode4Lib JAPANの事務局員に転職された、ふじたまさえさんが、こちらで素敵な文章で既に紹介してくれているので、ぜひご覧いただければと思います。

この内容をベースに、よりブラッシュアップして次の機会に備えます。
既に次の企画も着々と進行中ですが、いまの段階で言えるのは「また東北に行くぞ!」というところまで。
実はこちらから2度ほど職場のスタッフと一緒に、北の某図書館のお手伝いに赴いたのですが、そこでのご縁が着火点となり、より大きな動きが発動する気配となっています。
東北での写真も少しアップしてみました。こんな感じ↓で、当館スタッフと一緒に作業しました。

企画の細かいことは、まだまだこれから。
でも、この夏から秋の東北での活動、ぜひご期待いただければと思います。
ご要望その他は、私宛なりCode4Lib JAPAN事務局宛なりに、どんどんお寄せください。
できる範囲で、自分たちにしかできない何かを探して、積極的にやってみようと思います。